伊万里湾カブトガニの産卵推移

 伊万里湾の至る所にあったカブトガニの産卵地は、埋め立てや護岸工事などによって、現在では限られた地域に集中します。
 伊万里湾のカブトガニの生息状況を把握するには、産卵つがい数の記録を継続的にとることによって把握できないかと考えています。
 グラフは、1986年から伊万里湾の主な3地区(多々良海岸・多々良南海岸・トンコ島)の海岸に来浜したカブトガニの産卵つがい数です。
 1989年までは、調査回数が少なかったため確認つがい数も少なくなっていますが、調査回数も50回を越えるようになった1990年から1992年までの3年間は深刻な状態になりました。しかし、1993年からは一転して増加し、その傾向は1997年まで続きましたが、1998年から再び減少し、現在は大変心配される状況です。
 この間の湾内の特筆すべき変化には、以下のようなことがあげられます。

 1992年、伊万里湾福田の海岸を海水浴場にするための工事が始まる。
 1993年、福田の海岸に隣接する浦潟の干潟(幼生生息地)の埋め立て工事が始まる。
        干潟には、アナアオサが大繁殖し、干潟を覆い尽くした。幼生の生息に影響を与えそうだ。
 1998年、多々良海岸先の伊万里大橋の建設工事が始まる。
 2002年、干潟にアナアオサが繁殖した。1993年ほどではないが心配される状況である。
 2003年、前半が冷夏で、なかなか産卵条件が整う日が少なかった。産卵確認つがい数も130と少なく、心配される状況が依然と続いている。
  湾内で何らかの工事が始まると、産卵は湾奥の多々良海岸に集中するようであるが、これは決して喜べる出来事でなく、その後に産卵数は確実に減少傾向をたどるようである。また、干潟のアナアオサは、干潮時に干潟を覆い尽くし、幼生の生息に影響がでてくるのではないかと心配される。


 2009年〜2016年、ここから伊万里湾での産卵つがい数は400〜500つがい程度と安定している。伊万里湾での産卵つがい数のキャパはこの程度とも思われる。
 2017年〜2020年、つがい数増加傾向にあり、600つがいを超えてきている。ただし、2018年は、大潮時に台風が2度接近し、海岸は大荒れで、確認することもできなかった。
 2021年、伊万里湾では調査を始めた1986年以降、最高のつがい数を確認した。9月の記録も入れると1512つがいが確認された。これまでの最高つがい数(1994年)の2倍以上である。この要因については今後検討していきたい。

 
 下図は、1986年からの伊万里湾での確認つがい数です。
 3海岸とは、多々良海岸・多々良南海岸・トンコ島になります。